日本自治学会設立趣意書
地方分権推進委員会の第四次勧告までの勧告を踏まえた地方分権一括法が昨年の七月八日に成立し七月一六日に公布された。 そしてこの一括法に盛り込まれた地方自治法以下四七五本の関係諸法の改正は、若干の例外事項を除き、本年の四月一日から施行された。
この一括法の成立によって、地方分権改革は少なくともそのベース・キャンプの設営に成功したと言えるのであって、問題はこれから山頂を目指して登る登攀の道筋と手順ではなかろうか。
地方分権推進委員会関係者も政府関係者も一致して率直に認めているように、今次の地方分権改革は決して万全なものではない。 日本の地方自治を真にそれにふさわしい実質を備えたものに育て鍛え上げていくためには、さらなる改革課題がまだまだ数多く残されているように思われる。そうであるとすれば、今次の改革はあくまで第一段階の改革にとどまるとの認識に立ち、これに続くべき改革に向けて、いまから幅広く衆知を結集していく必要があるのではなかろうか。
制度改革と制度設計は表裏一体の関係にあり、制度改革論議も現行制度に代わる新制度の設計構想の裏付けを欠いていたのでは説得力に乏しい。とはいえ、現行制度の欠陥を指摘しその改革を求めることはたやすいが、これに代わる新制度を設計し提言することは難しい。そこで、今後の改革の推進を確実なものにしていくためには、一方で今次の地方分権改革の定着状況とその結果を客観的に把握しこれを評価しながら、他方では次なる制度改革に向けた制度設計構想をできるだけ幅広く豊かにしておかなければならない。 それには、地方分権推進委員会の活動体験に照らしてみても、少なくとも行政法学界・行政学界・財政学界の研究者たち、さらにはジャーナリストたちを中核にした、それぞれの専門学問分野の壁を越えた学際的な共同討議の蓄積が不可欠である。しかも、この研究者たちによる共同討議を研究のための研究に陥らせず、これを実態から遊離した机上の議論に終わらせないためには、自治・分権に強い関心を抱く広範な人たちが、この共同討議に幅広く参画してくださることが望まれる。
以上のような基本認識に立って、われわれは地方分権一括法が施行された本年度中に、地方分権と地方自治に関し深く考究する新しい学会として「日本自治学会」を設立することを提唱したい。 ただ、地方自治を研究領域とする学会としてすでに日本地方自治学会、地方自治経営学会、自治体学会等が存在し、それぞれ個性的で有意義な活動を展開しておられるので、これらの学会との関係については慎重な配慮を要する。われわれにはこれらの既存の学会に取って代わろうとする意図はいささかもなく、むしろこれらの学会とは今後とも共存共栄に努めていきたいと考えているところであるが、この機会に新しい目的と新しい会員構成の学会を創設して研究を深めることには、それなりに独自の意義があると考える。
地方分権と地方自治の関係に研究関心をお持ちのさまざまな研究領域の方々、それも地方分権改革のあるべき姿についても構想や意見をお持ちの方々が、幅広くこの設立趣旨に賛同され、今後の共同討議にご参集くだされば幸いである。
2000年11月
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